SNSの「竹島ICJ判決」は真っ赤なウソ|歴史的背景と日韓の主張を冷静に解説

国際会議場の円形テーブルと壁画|国際司法や外交問題の象徴的イメージ 出典:フリー素材サイト(商用利用可)

SNSの「竹島ICJ判決」は真っ赤なウソ
歴史的背景と日韓の主張を冷静に解説

SNSで話題の「ICJが竹島の判決を出した」は事実か?

国際司法裁判所は、竹島問題に一切の判決を出していない

最近SNS上で、「竹島(独島)の領有権について国際司法裁判所(ICJ)が判決を出した」という投稿が散見されますが、これは完全な誤情報(フェイク)です。ICJはこれまで竹島問題を審理したことも、判決を下したことも一切ありません。

なぜそんな嘘が広まるのか?

ICJという名称は国際的な権威を持ち、情報に説得力を与える効果があります。そのため、政治的意図を持った拡散や、事実誤認に基づく投稿がSNSで拡がりやすい傾向があります。特にSNSでは、「もっともらしく見える文章」が真実と誤認されやすく、利用者は慎重な情報確認が求められます。

ICJで裁判が行われた事実もない

ICJで国家間の領土問題を扱うには、当事国双方の裁判受諾の同意が必要です。日本は過去3回(1954年・1962年・2012年)、竹島問題をICJに提訴することを韓国に提案しましたが、韓国はすべて拒否しています。このため、裁判自体が開始されたことはありません。


竹島(独島)問題の基本と、争いの経緯

竹島とはどんな島か?

・日本名:竹島/韓国名:独島(ドクト)
・所在地:日本・島根県の北西約158km、韓国・鬱陵島の東約87km
・2つの主要な岩礁と周辺の小島から成る無人島(韓国警備隊が常駐)
・周辺は豊かな漁場と排他的経済水域(EEZ)が広がる

争いの背景は?

竹島は面積こそ小さいものの、周辺資源・地政学的価値・国家感情が絡み、長年日韓間で領有権を巡る対立が続いています。戦前・戦後の領土整理の過程で認識の食い違いが生じ、現在まで解決に至っていません。


日本の主張
竹島は歴史的にも法的にも日本領土

江戸時代からの利用実績

17世紀初頭、鳥取藩の漁民が幕府の許可を得て鬱陵島や竹島に渡航し、漁場や航海の中継地として利用していた記録が残っています。こうした歴史的利用を、日本は領有の実績として位置づけています。

1905年の島根県編入

1905年、日本政府は竹島を「無主地」と認識した上で島根県に編入する閣議決定を行いました。当時、韓国政府からの公式な抗議はなかったと日本は主張しています。

戦後処理と国際法的根拠

サンフランシスコ平和条約(1951年)において、韓国は独島を自国領として明記するよう求めましたが、連合国はこれを認めず、条約本文に含まれませんでした。このため、日本は竹島が自国領に含まれるとの立場を取っています。

ICJ提訴の提案

日本は1954年、1962年、2012年の3回にわたり、韓国に対してICJへの付託を提案しましたが、韓国はいずれも拒否しました。日本はこれを「国際法廷で争う意思がない証拠」と解釈しています。


韓国の主張
独島は歴史的にも地理的にも韓国の領土

6世紀からの歴史記録

韓国は、『三国史記』に記された512年の記録(新羅の将軍・異斯夫が鬱陵島と独島を支配下に置いた)を根拠に、古代から独島が自国領だったと主張しています。

大韓帝国の勅令(1900年)

大韓帝国は1900年の勅令第41号で鬱陵島を鬱島郡に改編し、その管轄に「石島」を含めました。韓国はこれを現在の独島と解釈し、日本の編入以前から実効支配していたとしています。

日本の「先占」論の否定

韓国は、1905年の日本による編入を「日露戦争中の軍事目的による不当な占有」と位置づけ、当時すでに韓国領だったと主張しています。

戦後のGHQ指令に基づく主張

韓国は、GHQが1946年に出したSCAPIN 677号で独島を日本の行政区域から除外したことを、韓国領である証拠としています。ただし、日本は「この指令は最終的な領有権判断ではない」と反論しています。

現在の実効支配

韓国は1954年以降、警備隊を常駐させ、灯台・ヘリポートなどを整備しています。この現状を「国際法上の有効な支配(Effective Control)」と位置づけています。


ICJでの裁判が実現しない理由

ICJ(国際司法裁判所)の仕組み

ICJは国連の主要司法機関で、国家間紛争の裁定を行いますが、領土問題は両国の同意がなければ審理できません。一方的な提訴では裁判は開かれません。

韓国が同意しない理由

韓国は「独島は自国領であり、領有権の争いは存在しない」としており、そもそも係争地として認めていません。このため、ICJで争う必要はないという立場を取っています。


SNS時代の「事実」との向き合い方

竹島問題はデマが流れやすい

領土問題はナショナリズムや感情論が先行しやすく、SNSでは誤情報や誇張が混在します。もっともらしい情報でも、必ず一次情報や公的資料で裏付けを取ることが重要です。

参考リンク

以下は本記事で参照した一次情報・公式資料です。詳細はリンク先をご覧ください。

・日本外務省|竹島問題に関する基本的見解
 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/takeshima/
・韓国外務部|Dokdo is Korean Territory(英語)
 https://dokdo.mofa.go.kr/eng/wpge/m_5441/contents.do
・サンフランシスコ平和条約(英文・日本語訳)
 英語原文・対訳ページ(英語テキスト)
 https://www.chukai.ne.jp/~masago/sanfran.html
 日本外務省公式によるPDF版(日本語訳含む)
 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/B-S38-P2-795_1.pdf

まとめ

SNSで流れる「ICJが竹島の判決を出した」という情報は事実ではなく、これまでに国際司法裁判所で竹島問題が審理・判決されたことはありません。竹島(独島)は、日本と韓国がそれぞれ歴史的・法的根拠をもとに領有を主張しており、立場の違いから現在まで解決に至っていない国際問題です。

日本は過去3回、ICJでの解決を提案しましたが、韓国は「係争地ではない」という立場から応じていません。こうした背景からも、領土問題が国際法廷に持ち込まれるハードルの高さがわかります。

本記事は、公開されている公式資料や一次情報をもとに事実を整理していますが、歴史や国際法の解釈には各国で異なる見方があり、記述には立場の違いが反映される場合があります。最終的な判断は、必ず一次資料や公式発表をご確認のうえで行ってください。


本サイトにはGoogle広告や楽天グループ等の広告に加え、

アフィリエイトプログラムを利用したPRリンク・特集記事が含まれており、 一部において収益が発生する場合があります。

タイトルとURLをコピーしました